“Flexible swinging lugs”

いわゆるフレキシブルラグ。可動式のラグデザインですが、ただ動くだけじゃなくてデザイン自体がデコラティブであることが1930年代的ポイント。同時にadvintageが愛してやまないデザイン。当時の広告ではひとつのブランドで必ず1本はフレキシブルラグ。下手したら半分いくほどの定番でした。

海外ではファンシーラグと一括りにされがちですが、40年代に入るとこういうラグデザインを持つ腕時計は姿を消していきます。原因はおそらくマーケティングの集約と排除の法則。ムダなデザインが如何に魅力的であるかを教えてくれる最大の師です。

 

 

 

“Sector dial”

実にさまざまなパターンが存在しつつも1930年代から40年代早期には姿を消したセクターダイヤルとよばれる文字盤デザイン群。アール・デコの強い影響で円と直線を複合的に組み合わせて時計文字盤に落とし込むというコンセプトを共有していて、特にアワーマーカーが扇状の図形で描かれるのが特徴。

その幾何学的志向性の濃度によってライトなものから重厚なものまでバリエーションは豊富ですが、個人的には主要なアラビア数字3個がセクターからドロップアウトして内周部に出てきたパターンが最もプリミティブで好き。ロレックスも当時セクターダイヤルのほぼ全パターンやってますね。

 

 

 

“Bullet Dial”

銃弾のような形をしたアワーマーカー。これは現在も見られるインデックススタイルなので50年代以降のデザインと思いきや、実は1930年代生まれ。

アール・デコの潮流が腕時計において特にインデックス類に影響を与え、同時に時計の普及とともに数字のみで12時間を示す必要性が薄れた結果、それらが新たなデザインキャンバスとなり、抽象化の中で生まれたバリエーションのひとつ。

まさにタイムレス。古さを感じさせない普遍的なデザイン性は現代機でも定番として愛されています。ちなみにミドーは1950年代、ユンハンスは1960年代、広告は1930年代。

 

 

 

“Flat bezel”

フラットベゼルも1930年代に突如一世を風靡し、その後姿を消したレアデザイン群のひとつ。

中でもフラットで階段状のベゼルはステップベゼルと呼び、階段状でないものは俗にカラトラバケースと呼ばれます。後者はパテック・フィリップが用いたことから由来している模様。

当時は実に多くのウォッチメーカーがこれらのフラットベゼルのバリエーションを多用していたことが資料からうかがえますが、1950年代以降薄型の腕時計が好まれるようになるとその数は激減。唯一無二の重厚感が非常に魅力的で、ヴィンテージウォッチ市場では常に高い人気を誇っています。