ドレスウォッチいえば、白文字盤でシンプルな三針、あるいは秒針を伴わない二針とか、薄くてスリムなスナップバックケースとかいろいろありますが、その定義はとにかく曖昧。厳密な分類してたらキリがないし、そもそも野暮。
今回ピックアップしたコレクションは、どれもノーブルな表情を持っています。それらは控えめなデザインをベースに、ローマンインデックスやバーインデックスといった直接的ではない、アブストラクティブなデザイン性が特徴です。ケースデザインも、ソリッドでスタイリッシュなものが中心。特にレクタンギュラーやクッションシェイプの腕時計はヴィンテージウォッチの専売特許。
一般的なドレスウォッチの定義とはそぐわない、アラビア数字を用いたインデックスもセレクトしています。しかし、それらは一様にドレッシーじゃないと切り捨てるのはおかしいと思います。今回セレクトしたアラビア数字のインデックスは、ブレゲスタイルの書体であったり、非常に細くディフォルメされていたり、あるいはミラーフィニッシュやアップライト仕上げといった高級感漂う特殊なスタイルを持っています。
冠婚葬祭やTPOでの腕時計の選び方を指南する本も多いですが、その場合大抵「ドレスウォッチ=地味な時計」。それならいっそ腕時計は付けないほうがいいんじゃないかとさえ思います。
まあ寒くなってきたので半袖短パンとはいきませんが、いわゆるビジネススーツ以外に合わせて全然オッケーなんだということ。体感で既に実践している人もいますが、意外と知らない誰かが勝手に作ったドレスウォッチのイメージに追従している人も多い気がします。
腕時計、しかもヴィンテージとなれば、もっとファッション視点で見てあげるべきなんじゃないか。今回テーマに選んだドレスウォッチも、スーツ用にだけ引っ張り出されるのはすごくもったいない。ドレスウォッチの楽しみ方や合わせ方の幅広さをもっと見つけたい。