1940年代は、秒針をセンターに置くスタイルはまだ新しい技術でした。
数百年も前から変わらないスモールセコンドに慣れた人にとって、秒針の視認に戸惑うこともあったかもしれません。だからこそ、当時のセンターセコンドウォッチのデザイナーは、秒針に個性を、存在感を持たせるためのアイディアを出し合いました。
その多くはレッドアローをつけたり、テールを伸ばしたりして差別化を図るのが一般的でしたが、中にはこの"TREBEX”のようなユニークなものも。
 

アンティーク 腕時計

 

 

お尻側にポインターテールが伸びる、初期のクロノグラフが持つ秒針のディテールをそのまま踏襲した1940年代の腕時計。この形が当時最もポピュラーなスタイルと言えます。

 

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そこに遊び心を加えたのが右のCYMA。異常にテールが長いしポインターはゴールド。視認性はもとより、秒針が生き物のように脈動する様にフォーカスしたデザイナーの意図が汲み取れます。
 

 

1960年代になると、スモールセコンドよりもセンターセコンドが一般的に。モダニズムの隆盛も相まって、徐々に視認性や機能性とは異なる、スタイリッシュなデザイン性を帯びたものが増えて行きます。

 

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中でも英国時計の雄〈スミス〉の一部のモデルに見られる秒針は、一際強い個性を見出せます。特に目を奪わせるのが菱形のモチーフに赤い皮膜を配した秒針で、光が透けることで文字盤にうっすらと紅を浮かべる奥ゆかしいギミック。
戦後生まれたスミスの腕時計は、その他のセンターセコンドモデルもモダンな雰囲気が目立ちます。平和な時代が生んだ自由なデザイン。機能美溢れるクラシカルなものとは別の、モダンデザインの美しさを堪能できるのもまた、このジャンルの楽しみです。

 

 

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