〈J.W.ベンソン〉は、腕時計の英国ブランドの良さを凝縮したような存在だと思います。
美しく、質実剛健。そんな言葉がぴったりくる腕時計が多く、またバリエーションも豊富。〈スミス〉もまた豊富なラインナップを持っていましたが、J.W.ベンソンの場合は様々なメーカーに製造を委託しており、そのバリエーションはデザイン面でも仕様面でも、メーカーの個性が全面に出たものになっているのが特徴です。

 

※関連記事 ≫≫ J.W.ベンソンの歴史
J.W.ベンソンの腕時計と聞いて最初に思いつくのが、後に「トロピカル」と称されるこの一本。

 

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ウォッチケースメーカー〈フランソワ・ボーゲル〉が手掛けた2ピースのクッションケースと、ポーセリンダイヤルの組み合わせ。熱帯気候でも使用できる腕時計というのがコンセプトで、高温多湿対策として気密性を高めるスクリューバック式の防水構造に加えて、インナーキャップを装備することで防塵性を確保。さらにポーセリンダイヤルは白磁製なので日焼けの心配がありません。
さらにムーブメントを手掛けたのが、J.W.ベンソンと付き合いの長い〈シーマ〉ということもあり、同社オリジナルの耐震装置である「シーマフレックス」を装備。耐震装置自体の歴史も浅かった当時の広告には、”SANDPROOF, WATERPROOF, SHOCKPROOF”の三語が踊り、その堅牢性が謳われています。
他に金無垢・銀無垢のバリエーションがありますが、個人的にはこのステンレススチール製が一番。当時の質の高いステンレススチールは、独特の質感とともに高級感があり、カジュアル・ドレスいずれのシーンでも真価を発揮する高い汎用性が持ち味です。
そして、ローマ数字インデックスモデルのバリエーションが多いのもJ.W.ベンソンの特徴。

 

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この3本はいずれも〈スミス〉が製造を手掛けた腕時計。第二次大戦後、純英国製腕時計の製造を開始したスミスは、数多くのJ.W.ベンソンのショップウォッチを手掛けることになりましたが、このローマン・インデックスを基調とした文字盤は、元はスミスが用いていたデザインに源流を見出すことができます。

 

 

 

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こちらは戦後間もない頃に製造された、いわゆるアーリー・スミスのローマン・インデックスモデル。初期はこのように全数字インデックスでしたが、1950年代に入りモダニズムの潮流が強くなると、間にモチーフを挟んだコンビネーション・インデックスに変更されることになります。

 

 

 

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1950年代後半を過ぎると、そのインデックスの載せ方にも変化が出てきます。このようにアプライド・インデックスで立体的に仕上げることで、より高級指向の強いドレスウォッチという趣に。

 

 

 

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これはもうひとつのバリエーション。クロームプレートケース×ステンレススチールバックという素材構成以外は、上の金無垢モデルと全く同じデザイン。いずれもデニソンケースです。

 

 

 

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スミス以外のメーカーによるJ.W.ベンソンも様々ありますが、こちらは〈フェルサ〉の自動巻きムーブメントCAL.1560を搭載したスイス製。25石のウルトラ・ハイジュエルのムーブメントがJ.W.ベンソンのハイエンド指向を物語っています。34mmの大振りなステンレススチールケースは、1960年代という時代性に即したサイズ。

 

 

稀代の政治家・実業家の白洲次郎がその懐中時計を愛用したことで、日本でも一部の人にはその名を知られるJ.W.ベンソン。しかしながら、有名ブランドに比べればほとんど知られていないブランドであるのも事実です。こうした「知られざる本物」というスタンスの腕時計にこそ、有名ブランドにはない魅力が満載されています。
明日4/29(土)、恵比寿店は通常通り営業しております。ご都合が合えば、是非。

 

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