今回4年ぶりにドイツに買い付けに行きました。ドイツといえばMade in Germanyのユンハンスが思い浮かびますが、ドイツはスイスと国境を接しつつ、またスイスのドイツ語圏とも密接な関係を持つことから、スイスブランドの腕時計はもちろん、スイス製ムーブメントを搭載したジャーマンブランドの腕時計が古くから市場に多く存在していました。

1930年代から40年代のドイツの腕時計市場は、そういった意味で英国と似た部分があり、無名ながらもハイエンドなプロダクトが揃うという稀有なマーケット。それらの特徴は質実剛健そのもので、金無垢ケースはほとんど作られておらず、メッキ系のケースが目立つ中でも特に厳選されたフル・ステンレススチールケースの腕時計が見せる、重厚にして高貴な佇まいは唯一無二です。

しかしながら、上記のジャンルを集めるというのも言うは易し。第二次世界大戦で徹底的に破壊され、さらには列強の分割統治を経て東西ドイツに分かれてしまう1945年以降は、当然ながらドイツにおいて良質な腕時計を選び出すことは、針の穴を通すような作業。また1940年代前半以前という、いわば腕時計の黎明期の良質なドイツ市場の腕時計を探し出すというのもまた、タイトロープを渡るような作業です。

ということで今月、と言っても残り半月ほどですが、マンスリーテーマは今回のドイツ買い付け旅行と連動する形で、当時ドイツ語圏に出回っていた腕時計をフィーチャーします。買い付けの様子はInstagramのStoriesを中心にリポートしていますが、追ってこちらのJOUNALでも旅行記を書く予定ですので、一緒にその気分を味わいながら当時の腕時計に思いを馳せていただければと思います。