70年てすごいですね。英国国民にとって、美しい恋人であり、偉大なる母であり、愛すべきおばあちゃんだった女王エリザベス2世。
今回は彼女が70年前に女王に即位し、その後行われた戴冠式にゆかりのあるスミスの腕時計をご紹介したいと思います。
父ジョージ6世の突然の崩御を受け、彼女が25歳の若さで即位したのが1952年。その年に製造されたのが、こちらのスミス。初期デザインから新たに「デラックス」シリーズのデザインに変更された、おそらく最初期と見られる個体です。ベルトも当時のもの。
そして即位から16ヶ月後となる1953年6月2日、ウエストミンスター・アビィで彼女の盛大な戴冠式が挙行されます。偶然にもこの日の早朝、スミスの腕時計を携えたエドモンド・ヒラリーが人類で初めてエベレストを制覇した、その第一報が英国に舞い込みました。
この腕時計は、まさに1953年にスミスが製造したもの。英国のジュエラー〈J.W.ベンソン〉名義で、ケースは9金無垢が用いられているのですが、王冠を戴くエリザベス2世の横顔が刻印されています。これは女王戴冠を記念した特別なホールマークで、1953年の金銀製品に僅かに見られます。
ケース自体もこのモデルでは見たことのないデザイン。女王のホールマークも含めて僕自身も初見です。
ちなみにこの戴冠式でのみ使用された「聖エドワード王冠」の他に、公式行事等でエリザベス女王が着用していた「大英帝国王冠」は、”クラウンジュエラー”として言わずと知れた英国の宝石商(ガラード〉が1937年に手掛けたもの。ガラードの腕時計もまたジュエラーズウォッチの代表格としてさまざまなバリエーションがあり、こちらの3点の腕時計はガラード名義でスミスが製造したもの。ガラードのウォッチボックスには誇らしげな”By appointment to HM The Queen”の一文が見られます。
ちなみに崩御当日はガラードのホームページには写真付きの追悼文が掲載されていました。
奇しくも英国のジュエラーを中心とするコレクションを展開する最中、また輝かしい英国の古い文物に魅せられた一個人としても、女王の死は心にくるものがありました。ご冥福をお祈りします。