まずは1942年と1943年のバーゼルで行われた時計見本市の資料から。

 

 
 

印象的なのがカッパーダイヤルの多さ。ホワイトダイヤルはむしろ少数派です。このことから、かつて腕時計のダイヤルカラーに用いられていたカッパーダイヤルはポピュラーな存在だったことがわかります。

しかし1950年代以降、カッパーダイヤルは急速に影を潜め、ほとんど用いられなくなります。現行品におけるカッパーダイヤルは異色の存在としてとらえられ、定番と言うよりは変化球的なデザインに思われがちです。しかし実際その歴史を紐解けば、カッパーダイヤルは至極クラシックなダイヤルカラーだということがよく分かります。

ただ知られてない、見慣れてないだけで、その高いデザイン性をスルーされる無名ブランドの腕時計と同様、きちんとその背景を理解して味わう必要があるジャンルとして、今回のテーマでフォーカスしてみました。

 

 

ちなみにカッパーダイヤルは、色調によってはサーモンピンクと表現される場合もあります。エイジングしてその深みを増したブラウンチェンジダイヤルに近いものもあれば、コンディションの良い個体は光を通すような透明感があり、それぞれユニークな存在感が魅力的です。

そして同時に、どこかセクシーな美しさを漂わせているのもカッパーダイヤルの特徴。見慣れないダイヤルカラーは全部カジュアル、とされがちですが、きちんと歴史を紐解いていけばカッパーダイヤルのクラシックスタイルにおける役割が顕在化します。つまり、ドレッシーな装いに合わせると本来の華麗な官能美が強調され、ホワイトやブラックダイヤルでは表現できない世界観を演出できると思います。