今月のテーマ"28"では、いわゆるボーゲルケースの腕時計が充実しています。
ウォッチケース専業メーカーで、名門パテック・フォリップにもケースを供給していたことでも知られるフランソワ・ボーゲルですが、特にこのサイズのケースにこだわった美的感覚は半世紀以上経過した今でも新鮮に輝いています。
中でも直線と平面だけで構成されるオクタゴナルケースは工芸品の域。その研ぎ澄まされたデザイン、世界観はヴィンテージウォッチはもちろん、現行品においても類を見ません。
そしてこの28mmサイズの定番といえばミドー。ほぼ全てフランソワ・ボーゲルがケースを手掛けており、このサイズが特に多く揃います。デザインのバリエーションも豊富。
中でも1930年代を中心としたアール・デコのシリーズは適度なボリューム感と使いやすいスペック、それでいてオシャレなルックス。当時エルメスがラブコールを送ったのも頷けます。
こういう小ぶりな腕時計の魅力は、使っていてなかなか飽きがこないところにもあります。かなりの存在感を放つステップドベゼルは、ラージサイズよりもあえて28mmのサイズがおすすめ。ケースフォルムが縦に厚みを帯びていてコンパクトなボリューム感というユニークな存在感を持ち、何よりファッショナブルかつノーブル。
今月のテーマ"28"は多くの方からご好評いただきましたが、特に反響をいただいたのがサブテーマのマイクロウォッチでした。自分の中では久々に納得のいく新しいジャンルを開拓できた気がしますが、実際お客様にとってはどう映るのか心配もありました。
ヴィンテージウォッチの謳い文句といえば、「悠久の時を経た一点物」とか「人生と共に時を刻む」みたいな壮大なテーマを想像しがちですが、もうちょっとvanityで軽やかなイメージで捉えてみてもいい。ヴィンテージウォッチはそれくらいの懐の深さがあると思います。