今年もadvintageの原点とも言えるマイノリティへの憧れと回帰をテーマに、ヴィンテージウォッチの尽きない魅力を新鮮な切り口で解き明かして行きたいと思います。
その中で今年一発目のマンスリーテーマは、ある種腕時計のマイノリティとも言える多角形ケースの腕時計にフォーカスします。ふつうは腕時計=ラウンドがポピュラーで、多角形ケースとなると途端に敬遠する人が多いのが不思議でした。確かに、みんな大好きなミリタリーウォッチと比べると、はっきりいって大衆ウケはしないジャンル。
多分その理由は、ラウンドタイプと比べて省スペースなため想像以上に小振りに感じてしまうのと、そのフォルム自体あまり見慣れていないからだと思います。
現代の腕時計の多数派はラウンド形ですが、かつて1940年代以前は、逆に角形時計の方が多数派だったことは意外と知られていません。懐中時計には無い腕時計の個性、それはポケットから出し入れする必要がなく、そのため引っ掛かりの少ないラウンド形状に縛られる必要がなかった点が非常に重要で、当時の腕時計はまさに百花繚乱のケースフォルムに彩られていました。
また角形ケースと言っても、実際そのスタイルは定番のレクタンギュラー(長方形)だけではありません。両脇が膨らんで樽のような形をとるトノー形や、完全な正方形のスクエア形などさまざま。さらには角形とラウンドの合いの子のようなジャンルとしてポピュラーなクッション(座布団)形、オクタゴナルと呼ばれる八角形のケースなど、多角形のスタイルは非常にバリエーション豊富。
とはいえ、このジャンルもあくまでマイノリティ。ただしそこにはadvintageが惚れるマイノリティの美学が凝縮されていて、実はそれこそが大衆化したヴィンテージへのアンチテーゼ、限られた人間にしか分かり得ない魅力や価値の共有というヴィンテージ本来の面白さを再認識させてくれるアイテムだと思います。
今年もぬるっと営業開始しています。銀座にお越しの際はぜひ。