今月のテーマ “Unique Lug-style” 。
1940年代のデコラティブで遊び心のあるラグデザインが中心です。
ユニークラグの筆頭、フレキシブルラグ。別名、スウィベルラグ。ただラグが可動式になっているだけで、特別な効能はありません。フィット感が良くなるかどうかは、もはや気分。
無駄なデザインほど愛おしい。これに尽きます。
こちらの大小対の金無垢時計は、ティアドロップと呼ばれる水滴のようなラグデザインがエレガント。左の〈トレベックス〉はどちらかというとホーンラグに近い形状ですが、溝を設けて重厚かつ繊細な表情を演出。
ちなみにこのトレベックスは35mmのラージケース。メンズサイズながら28mmのワインガルテンスはかなり小ぶりですが、ラグのボリューム感によって存在感の幅は広め。
こちらは特にデコラティブとかファンシーとかいう形容詞で語られるラグスタイル。陰影がくっきりと表れるシルエットの美しさに目を奪われる。
ケースは小振りでも、ラグにデザイン性とボリュームがある腕時計は、単なる普通のラージケースよりも圧倒的に存在感があります。断然オシャレだし、何より現行品ではなくヴィンテージウォッチを選ぶのなら、この魅力を味わわずしてなんとする。
この両者、いずれもウォータープルーフ仕様でこれからの夏本番に持ってこい。
ウサギの耳のような独創的なラグデザインを持つロンジン。やや大ぶりな9金無垢のボディも丸みを帯び、しっかりとした厚みもとられた柏餅みたいな独特のフォルム。
当時の英国市場向けに企画された個体で、ケースを手掛けたE.B.E社は他にもフレキシブルラグやオイスターケースに似たハーメティックケースなどユニークなものを作っていたことでも知られています。
〈オーガスト・レイモンド〉が手がけたこちらの1940年代の腕時計。この時代のラグデザインには、現代ではほとんど失われてしまった旧い加工技術が用いられているものがいくつかあります。
特にこちらのような、曲線を描くラグの流線型に沿って、平面に削っていく技術。今では高級腕時計にしか見られないような高等技術が、当たり前のように用いられている。それがヴィンテージの大きな魅力でもあります。
先ほどとは打って変わって、流線型ではなく直線と平面のみで構成された非常にユニークなケース。防水ケースの権威〈フランソワ・ボーゲル〉が手がけたもので、どの角度から見ても面の陰影が表れる奥行きのあるデザイン。重厚感が持ち味のユニークケースです。