最初に買うべきヴィンテージウォッチって何?人によって重視する部分が違うので、その輪郭が定まりづらい今回のテーマですが、セレクトのコンセプトはずばり、「汎用性」です。
ヴィンテージウォッチ最大の弱点である防水性、耐衝撃性をある程度クリアしていることが前提で、加えて身に付ける人の装いや場所を選ばないデザイン性を備えていることが最大のポイント。初めて買うヴィンテージウォッチは、毎日でも着けたいと思うのが自然です。でも非防水ケース、耐震装置非搭載のドレッシーなヴィンテージウォッチは、綺麗でかっこいいけどやっぱりガンガン使ってしまうとオーバーホールの頻度がどうしても増えてしまう。
ケースもできればソリッドなものが好ましい。長年使うと磨耗して地金が露出しかねないメッキ系のケースよりも、金無垢・銀無垢、そしてオールステンレススチール(SS)製のケースが比較的安心かと思います。
じゃあミリタリーウォッチでいいじゃん?という声も聞こえますが、そうでもない。意外とミリタリーウォッチは着回しが難しいのです。デニムとかラフなスタイルにはいいけど、ドレッシーな装いに合うものは少ないんです。
だからといって、何処にでもそつなく着けていける質の高いヴィンテージウォッチは、意外とありそうでない。
なぜか?そういう機能性とデザイン性を備えたものは人気がある上、レアだからです。
1960年代以前のヴィンテージウォッチは、ケースの素材や作りがとにかくバラバラ。金無垢や銀無垢の貴金属はもちろんのこと、SS製のケースも当時は高級品でした。ドイツ語ではエーデルシュタール(高貴な鋼鉄)というほどで、美しい質感と非常に高い硬度を持つ反面、加工が難しく、特別な工作機械の設備投資ができる一部のメーカーのみが扱えるもの。オールSSの防水ケースや繊細なデザインのケースが少ないのも頷けます。
だからこそ、金銀無垢やオールSSでスクリューバック、しかもドレッシーな文字盤デザインの腕時計を選んでおけば、まず人と被ることはないと思います。とりあえずお買い得だからと勧められて買ったヴィンテージが、結局みんなとおんなじ顔のオメガ・ロレックス、、、ってちょっと悲しくないですか?
 

 

▲防水ケース製造の大家として名高い〈フランソワ・ボーゲル〉のオールSS防水ケースを採用した、〈ブラヴィントンズ〉の腕時計。耐震装置、耐磁機能も備えたタフモデルにもかかわらず、ドレッシーでハンサムな顔立ちが特徴。

 

 

 

▲フラットなベゼルが階段状に連なるステップドベゼルは、独特の重厚感を持つ1940年代にわずかに見られたデザイン。ヴィンテージ市場では特に人気の高いディテールですが、中でも珍しいのが複数のステップを持つマルチステップドベゼル。重厚感に加え繊細さすら漂うレアピースです。

 

 

 

▲かつて英国に存在した、"E.B.E."というウォッチケース専業メーカー。全く謎の存在ですが、こちらのようなフレキシブルラグとスクリューバックを採用した唯一無二のユニークケースを作っていました。素材のバリエーションは金無垢かSSの高級素材のみで、ロンジンやJ.W.ベンソンといった有名ブランドもこぞって採用していたようです。

 

 

 

▲裏蓋はすべてコインエッジ仕上げのスクリューバック。ラグは180度スムーズに動くため、繊細さとともにアクティブな雰囲気も。