腕時計好きの方は、白文字盤派と黒文字盤派とに大きく別れるかと思いますが、実はもうひとつのバリエーションに、「カッパー(コパー)ダイヤル 」という赤銅色の文字盤が存在します。実は1930年代頃から見られる比較的古いスタイルです。
黄色や青とかではなく、赤銅色。
腕時計の意匠には、ほぼすべて何らかの実用目的があると言われますが、なぜこの色が選ばれたのかははっきりしません。 視認性を確保する中で、ホワイト、ブラックに変わる文字盤色として選ばれたのがこの色だったと推測できますが、数多ある中で赤銅色を選んだ当時のデザイナーのセンスたるや。
なるほど、ブラックのインデックスプリントもくっきりと見えるし、何よりヴィンテージならではのブルースチールの時分針がよく映える。それでも、こうした視認性の確保だけでこの色が選択されたと考えるのは安直だし、古いモノだけがもつ奥行きの広さとして理解しておきたいと思います。
さらに、ひと口にカッパーダイヤルと言っても様々な色合いが存在します。薄く上品な水柿色、ほのかなピンク色が加わった退紅色。ごく繊細な色の表情の違いは、長い年月で褪色する文字盤のそれと似た、唯一無二の味わいを持っています。
これもまたヴィンテージウォッチのみが持つ、アート・オブ・エイジングのひとつ。