腕時計とスポーツについて。
腕時計において画期的な発明でもあったロレックスの「オイスター」は、実はスポーツ用の腕時計として発表されました。現代的な腕時計からすると信じられないことのようですが、本当です。
 

アンティーク 腕時計

 

1920年代後半に産声を上げたその腕時計は、当時隆盛を極めたアール・デコの装飾様式を伴い、また懐中時計時代からの定番となっていた円形ケースではなく、新定番として目立ち始めたクッションシェイプのケースを採用していました。現代の私たちがアップルウォッチへ向けられる視線と同じ感覚が、当時の人々の間にあったのかもしれません。
ちなみに当時の広告で用いられるスポーツと言えば、まず圧倒的に水泳。ロレックスによるオイスターの発表とともに、各メーカーによる防水性を謳った腕時計の開発競争がヒートアップし、その広告には決まって腕時計を着けて泳ぐスイマーがモチーフとなっていました。そんなに腕時計を着けて泳ぎたい人がいたのかとも思いますが、当時は人々の常識を覆すインパクト大のモチーフだったのかもしれません。
翻って、現代の私たちがそうした当時の腕時計を身に着けるということは、その機能性を期待して身につけると言うことはほとんどないと言ってよいと思います。精度や防水性能、その他特殊計測機能というよりも、独特のデザイン性や世界観がアンティークウォッチを選ぶ際の主であることは確かです。しかしながら、そのデザイン性、世界観を形作る重要な要素となるのが、当時の最新の技術が結集された機能性の部分であることも忘れてはいけません。
物の「機能」と「作用」の関係性は、時を経ることで変わってゆく。ということでしょうか。