スミスの腕時計のバリエーションは、「デラックス」だけではありません。
1952年にリリースされたデラックス・シリーズの後、様々なモデルがリリースされました。
まず1954年にリリースされたのが「エベレスト」。
言うまでもなくエドモンド・ヒラリーがエベレストの人類初登頂の際にスミスの腕時計を着用したことによる、いわばシグネチャーモデルです。ただし、当時のスミスの主力はデラックス・シリーズで、”EVEREST”の名を冠したモデルはごくわずかのみ。
ちなみにこちらの1960年代に製造された”EVEREST”で、25石の自動巻きムーブメントを搭載した非常に珍しい一本。次にご紹介する「インペリアル」モデルで主に使用された、スミスの最上級ムーブメントのオートマチックモデルを採用した実験機的なレア個体です。
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「インペリアル」がリリースされたのは1958年。「新しいスリムなエレガンスと際立つ精度のコンビネーション」が謳い文句のこのモデルに搭載されたCAL.1014は、名機”1215”をアップデートしたスミスの最上級ムーブメント。手巻きの場合は主に19石、そして英国製としては数少ないオートマチックムーブメントも存在し、こちらは25石という多石が用いられています。先に触れたエベレストにはこのムーブメントが使用されています。
翌年の1959年には「アストラル」をリリース。デラックス・シリーズに負けず劣らずの豊富なバリエーションを誇り、当時のトレンドを反映したシンプルかつモダンなデザイン性が特徴的です。こうしたスミスの各種モデルはデザイン上のバリエーションとともに、ケースのデザインや素材のバリエーションも豊富。こちらの9カラットの金無垢ケースを使用したモデルは、主に英国企業が長く勤続した社員向けの贈答用とされものが多く見られます。
余談ですが、デラックス・シリーズと同時期にリリースされたモデルの中に、「エンパイア」というシリーズがあります。
このシリーズも文字盤・ケースともにデザインのバリエーションが非常に豊富で、基本的に5石の受け石にピンレバー式の安価なムーブメントが採用されているのが特徴。いわばエントリーモデルとしてスミスが用意したシリーズで、比較的当時の価格も安価に設定されていました。
とにかくバリエーションの多さが目立つスミスですが、ムーブメントはほとんど同じものが搭載されているので、メンテナンス性の面で安心できるのも魅力です。