アンティーク 腕時計

今回は、腕時計のケースデザインの中では最も古典的とされるクッションシェイプについて。個人的に一番好きなケースです。
アール・デコのデザイン潮流は、文字盤だけでなくケースの形状にも大きな影響を及ぼしました。懐中時計から腕時計へとスタイルが移行して行った時期とちょうど重なって、従来懐中時計が懐から取り出すのに最も適した円形の形状から、腕時計は自由なケースデザインが可能となりました。その中で生まれたのが、レクタングルシェイプに代表される多角形ケースや、オーバルケース、そしてクッションケースなどでした。
クッション(座布団)型のケースは主に1930年代から1940年代の時期に多く存在し、当時最も格式の高いスタイルとされていたようです。とりわけ英国市場で人気を博しており、ケースの素材も金無垢や銀無垢といった高級素材が使用されたり、贈答品として刻印が入ったものも多く見られます。
基本的に30mm前後と小振りなサイズで、シャツの袖を邪魔しない控えめなデザインが特徴。昨今ではあらゆる腕時計がデカい・厚い一方、これらの腕時計はとても品が良く、ドレスにもカジュアルにもきちんと合わせてくれます。クラシックな印象の強いジャンルですが、最近ではその優美さが再評価されつつある旬の腕時計。アンティークならではの味わいも加わり、スタイリングにもお洒落感を演出できそうです。