Nuance of Black.
「黒の陰影」というテーマで望んだ今月。数多くの黒文字盤の腕時計を展示しましたが、それらはどれひとつとして一様に黒ではありません。仕上げの違い、重ねてきた年月と環境の違い、さまざまな違いがそれぞれ異なる陰影を形作っているとういことが表現できればと思い、このテーマを選びました。
特にブラックミラーダイヤルはインデックスとのコントラストを強め、また光沢をもって仕上げることで光源の少ないシーンでも視認性を確保するという目的を持ちながら、そのシックで美しいルックスから「用の美」の代名詞として高い人気を誇ります。白文字盤に比べて製造数が少ないというのもあり、そうした希少性も黒文字盤の特殊性を強調しているように見えます。

 

 

 

 

 

〈ユニバーサル・ジュネーブ〉の手掛けたロングカーヴェックス。ギルトフィニッシュの黒文字盤に描かれる繊細なシルバーのバーインデックス。この美しい文字盤デザインはドレスウォッチにこそ相応しい。これがブラックダイヤルの原点であり、ミリタリーの黒文字盤はあくまで派生だということを教えてくれます。

 

 

 

 

 

ミドーが手掛けた〈ウエストエンド・ウォッチカンパニー〉の貴重なセクターダイヤルモデル。夜光ではなく、ゴールドライティングのインデックスの黒文字盤は、ミリタリーよりもむしろドレッシーな雰囲気。不意に光が当たってキラリと光る都会的な輝き、暗がりでぼうっと浮かび上がる物憂げな輝き。そのどれもがノーブルで美しい腕元の光景。

 

 

 

 

 

 

無銘ながらステップベゼルのレクタングルケースやブラックミラーダイヤルを採用した極めてまれな腕時計。1940年代、フランス製。グラフィカルな文字盤デザインも含め、全体にアール・デコの様式美を纏った一本。ニューオールドストック。
次月には新たなテーマで商品ラインナップも一新します。そちらもぜひご期待ください。