ただ防水性のある時計がサマーウォッチってわけじゃない。
キーワード別にいくつかご紹介します。
 

 

"Waterproof & Automatic"

ロレックスの創業者ハンス・ウィルスドルフが求めたもの。それは完全防水と自動巻きムーブメントのマリアージュによる「壊れない」腕時計。
どんなに防水性の高いケースを作っても、着用者によるリューズ操作の際に生まれる巻真とチューブのわずかな隙間から、湿気や埃が混入してしまうリスクは消えない。彼に撮っては、加工精度の高いスクリューバックケースとねじ込みリューズを備えた、完全防水とまで謳われるオイスターケースだけでは不十分でした。
そこで彼の出した答えは、できるだけ精度の高いムーブメントに「パーペチュアル」と銘打った自動巻上げ機構をオイスターケースに搭載することで、高い気密性を保持したまま余計な操作を加えることなく長く使える、そんな腕時計でした。
ウィルスドルフのコンセプトは、ロレックスのディフュージョンブランドとして知られる〈チュードル〉の腕時計にも宿されています。こちらはメンズ(OYSTER PRINCE)とレディース(OYSTER PRINCESS)。
王子と姫君。英国王室の家紋テューダー・ローズとともに、そのモデル名も高貴な血統を象徴する対の腕時計。

 

 

 

“Gold"

ドレスウォッチの代名詞。advintageでもこれまで散々ご紹介してきましたが、やっぱり外せない。
特にソリッドゴールドのスクリューバックケースは構造上肉厚になり、ドレスアップしたスーツスタイルに力負けしない存在感を生み出します。
比重の重い金無垢、しかも肉厚となると、その重量感からか、着用時の高揚感を高めてくれる。背筋が伸びて気が引き締まるのは、ゴールドウォッチの重要なパッシブメリット。

 

 

 

 

 

“Sports"

第二次大戦が終わると、それまで各社がこぞって開発競争をしてきたミリタリーウォッチの需要が落ち、そこで培われた防水性や耐久性といった時計製造技術は、新たに勃興したアウトドアやスポーツといったアクティブ・シーンにおける腕時計に向けられることに。
戦後初期、1940年代後半から50年代初頭のそうしたスポーツモデルの特徴は、30mm前後の小ぶりなサイズ。そして視認性を求めた結果生まれたユニークな文字盤デザインです。防水性、耐震性、防塵性、etc… 文字盤にこれでもかと踊るスペック表記も注目したいディテール。

 

 

 

 

“Patina"

ノンポリッシュケース、リフィニッシュされていない文字盤、そして夜光塗料にいたるまで、昨今のヴィンテージウォッチ市場では、当然のようにオリジナル性を常に求められます。かつての欧米ではそんなこともなく、古いのに真新しい時計に見えるのを良しとしていいました。汚れた文字盤のリフィニッシュ、多少ケースが痩せてもキズを取り除くために行われるポリッシュ、光らなくなった夜光塗料の載せ替えといった、現在ではタブーとされる作業が修理の一貫で普通に行われていました。
そこに異を唱え、現在のオリジナル性重視の価値観をもたらしたのが、日本の侘び寂びの精神。使い込まれ年季の入った佇まいに美を見出すことは、新たな美的感覚として欧米人に受け入れられました。
使い込まれた風合いやエイジングの跡。中でも美しく色付いた文字盤は「トロピカルダイヤル」と呼ばれ、均一的なブラウンだけでなくマーブル状の模様になったり、長く動かない状態で保管された結果生まれた針の跡が残っていたりと、その個体毎に異なる背景が奥行きを深めています。英語でパティーナと言いますが、そっちは個人的に多少含意が広すぎるのかも。
美しくエイジングした腕時計は、夏の装いに非常に合います。綺麗に色落ちしたデニムと同じで、汚いのはちょっと違う。上品さを感じられる経年感であることが重要。

 

 

 

 

“Military"

もはや言うに及ばず。やっぱり夏場には一本欲しい。