アンティークウォッチは、その控えめな表情ゆえに何にでも合いそうに見えるのですが、意外と難しいのです。
例えばモードでファッショナブルな服にアンティークウォッチは似合うかといったら、何となく違う気がする。逆に腕時計以外のアクセサリーが似合うかもしれない。ミリタリージャケットにミリタリーウォッチは当然違和感ないけど、あまりにも普通。ドレッシーなスーツ・スタイルに、1940年代のスミス。スーツのパワーに押されて、スミスの魅力が半減しそう。かといって、無頓着な服に合わせてもアンティークの魅力は輝かない。
多分、いかにも一枚岩的なスタイルよりも、特にジャンルにこだわらない、肩の力が抜けた感じのあるスタイルがいいんじゃないかと思います。流行りの言葉で言えば、抜け感があってエフォートレス。何となくですが、アンティークウォッチがハマるのはそういう感じかなと、今は思います。
また、アンティークウォッチはある程度年季が入っている分、コーディネートにも年季を感じさせるような存在感のあるアイテムがあると丁度いい。それこそ色褪せて多少ぼろくても、味わいがあれば一層いいかもしれない。
前置きが長くなりましたが、今回もヨーロッパでストリートスナップを撮ってきました。advintageの腕時計を合わせたいスタイリング、ファッション性を感じる人たちのスナップです。
彼らは、決して奇抜な服を着ていないのに存在感がありました。自分の体型やキャラクターを良く知っていて、全く服に着られていない。身につけているものは普通のアイテムなのに、トータルで見ると個性的。一目でお洒落!と分からないところが良いのかもしれません。
彼らを通じて、時計とは別の形でadvintageを表現することができれば、とも思っています。
そういう意味では、トップバッターのこの人は最高。
 

アンティーク 腕時計

ルーズなんだけどぶかぶかでもない絶妙なバランス感覚。くたびれたアイテムだからこそ溢れる存在感。色合わせもいいし、つま先の禿げたブーツも粋に見えます。同じアイテムのコーディネートは日本人にも多いけど、大体みんなが着ているのはジャストサイズの新品というところでしょう。
この人には無銘で味のあるデザインの腕時計が似合う。ロレックスなどはもってのほか。ロンドンの路上にて。
この人も一見すると普通に見えるけど、バランス感覚が秀逸。
 
アンティーク 腕時計

ダブルブレストのジャケットをさらっと。こんなに自然に着られるものなんですね。デニム、シャツ、ホワイトスニーカーと、スタンダードなアイテムだけで揃えているのにジャケットが浮いてない。非常に参考にしやすいバランスの取り方だと思います。パリの路上にて。
ダブルのジャケットはボックスシルエットが出しやすいので、ワイドパンツを合わせて長方形に。ただそれだけだとメリハリがなくなるから、小物にセンスが光ります。この人はそこをきちんと押さえてる。パリのイッセイミヤケのショー前で、彼はファッショニスタ達を撮影するカメラマンの1人でしたが、むやみに群がらず、自分で選んで撮っていたところにも惹かれました。
 
アンティーク 腕時計

ルーズなトップスを主軸に、他アイテムでうまくバランスをとる。今回見た人は、そういうスタイルが多かった気がします。ジャケットだけで見ると丈がやや長過ぎるのに、全体的に見るとヘンじゃない。やはり主役は大判ストールでした。パリの地下鉄にて。
 
アンティーク 腕時計

ショート丈のトップス、ボックスシルエットの2人。ロンドンの有名なマーケットにて。
 
アンティーク 腕時計

 
アンティーク 腕時計

どちらも似たシルエットではありますが、ちゃんと個性的。アースカラーで統一しているためか、カジュアルだけど落ち着いた雰囲気で品があります。
こちらはパリのイッセイミヤケのショー前。フリンジ付きのエレガントなショートガウンにテーパードが効いたミリタリーパンツと言う、ありそうでないミックスコーディネート。上の2人と共通項の多いシルエットですが、全く違った雰囲気です。今季グッチのホースビットローファーがポイントですね。
 
アンティーク 腕時計

マニッシュなコーディネート。そのまま男性が着ても全然おかしくない。よくあるのは足元だけヒールでエレガントに見せるパターンですが、この人はサイドゴアブーツというストイックなアイテムを選ぶところがすごい。パリの路上にて。
 
アンティーク 腕時計

何かとお洒落感が出るロングコートもよく見ました。一枚羽織るだけで印象的に仕上がるのですが、この人は他のアイテムで柄遣いが一枚上手。パリ・ボンマルシェの本屋さんにて。
 
アンティーク 腕時計

上質でエレガントなロングコートをメインに、プレーンなアイテムでまとめる。王道ですが、このバランスが難しい。ロンドンの路上にて。
 
アンティーク 腕時計

微妙な色合い。シンプルで普遍的だけど、古臭くない。腕時計が必要なスタイルではないかもしれないけど、この存在感は大好き。イーストロンドン、ショーディッチにて。
 
アンティーク 腕時計

王道感のあるチェックのトレンチコート。それを完全に普段着に落とし込むテクニックはさすがパリジャン。インナーをルーズネックシャツ、足元はメッシュ素材のアメリカーナ。素材感とカラーリングで軽やかに見せているけど、おそらく計算しているわけではなさそうです。パリ、サンポールにて。
 
アンティーク 腕時計

上の人とよく似たロングコート。こちらはクラシックなコーディネートですが、各アイテムの色味を統一することで上品さが生まれています。シルバーの腕時計で無難にいきたいところですが、あえてゴールドも捨てがたい…。ロンドンの小さなマーケットの帰りのバス停。
 
アンティーク 腕時計

ドレッシーなスーツスタイルに、こんなカジュアルなカラーのパーカ。ハズしアイテムとしては存在感がすごいですが、腕元はアール・デコ、シルバーケース、角形時計で潔くいきたい。ルーブル前にて。
 
アンティーク 腕時計

ドレス・スタイル+ハズしアイテムのパターンでもう1人。スーツでビシッと決まったコーディネートには、アンティークウォッチだとパワー不足の感がありますが、足下をスニーカーでドレスダウンしている分アンティークもしっくり収まるスタイリングに。ロンドン、サヴィル・ロウにて。
 
アンティーク 腕時計

いかがだったでしょうか。 たくさん載せましたが、何となく共通項というか、advintageの腕時計を通じて表現したいことと繋がる部分を感じていただけると嬉しいです。
腕時計はファッションアイテムの一部でありながら、ある種工芸品的な見方が先行してしまうものです。造形美や時計というギミックがそうさせるのでしょうが、あくまで自然にお洒落にみせてこそ、だと思います。
計算されていないバランス感覚というのがキーワードになるかと思いますが、いかにもな感じではなく「なんとなく、かっこいい」というのが、advintage的にこだわりたい部分です。
実はコレ以外にもスナップはたくさんあります。そちらはまた別の機会に。