ウエストエンド・ウォッチカンパニー。主に英領インド市場で流通していたスイスメーカーとして知る人ぞ知る存在ですが、その腕時計には自社企画のモデルだけでなく、〈ロンジン〉や〈ミドー〉といった名門メーカーによる別注モデルも存在します。
“Bijou”のネームが朱書きされるこの個体はロンジンの名機10.68Zを搭載し、フランソワ・ボーゲル社製のステップベゼルが特徴的な防水ケースを採用。インドの高温多湿で塵埃の多い着用環境を想定した堅牢な設計と、ノーブルなルックスが同居するいかにもハイエンドな佇まいです。
このモデル自体は民生市販品ですが、英領インドにおける軍関係者を対象として製造された”C.S.(I)”の刻印を持つ個体群と設計思想を共有しています。ノンルミナスのホワイトダイヤルにブルースチールハンドという文字盤デザインは、同時代の英国空軍に支給されたMk.7Aシリーズを彷彿とさせます。
こうして並べてみると、ウエストエンド社の腕時計の出自の多様さがよくわかります。ロンジン製ムーブメントを使用した個体、ミドーが製造を手掛けた自動巻きムーブメント搭載の”Multifort”、そしてウエストエンド自社製の”Sowar Prima”。基本はインドのタフな着用環境に適した防水ケースの手巻きモデルですが、ミドーが手掛けたものは同社の十八番でもある自動巻きムーブメントを採用していたり、ロンジンの場合はいわゆる「セイタケ」のケースが使用されたりと、各社の個性が光るバリエーションが見られて面白い。
実際にウエストエンド社はミドー、そして後年にはロンジンのインド市場における代理店を務めており、それぞれ深い関係があったことをこれらの腕時計が物語っています。






