Micro Watches.

直径およそ20数mmという、小振りというよりも女性向けと言った方が正しいケースサイズの腕時計。確かにこの腕時計は、当時レディースウォッチとして製造されたものです。しかしながら、その無骨なケースやクラシックな文字盤デザインはメンズウォッチと全く同じ。

ヴィンテージ、アンティークのレディースウォッチと言えば、今も昔も華奢なケースにデコラティブな装飾、あるいはきらびやかな宝石をあしらった可憐な腕時計を思い浮かべますが、今回のキュレーションテーマで取り扱う腕時計は、レディースサイズでありながらメンズライクで無骨なルックス、言い換えればメンズウォッチをレディースサイズにスケールダウンした腕時計。

 

これは、性差を超えた腕時計です。そのインスピレーションの元となったのは、フランク・シナトラの一枚の写真でした。

腕まくりしたサファリシャツにネクタイというラギッドなスタイル。その腕元には、20mm程のレディースサイズの腕時計。あえて「シナトラ・スタイル」と呼びますが、ストラップは厚みのあるブラックレザーを選び、腕のやや深い位置でビシッと着ける。大振りな指輪ともうまく調和し、華奢なイメージはありません。

もちろんただケースが小さければいいというわけでもありません。レディースサイズ並みのケース仕様にもかかわらず、男前なルックス。このバランス。しかしこれがなかなか見つからない。以前当店のジャーナルでチラッとご紹介しましたが、当時まだ数本しかなく、あれから4年かけてマンスリーテーマでご紹介できるだけの本数を集めることができました。

 

また、時間がかかったのには他にも理由があります。それはシナトラが選んだレザーストラップ。ラグ幅12mmのため細身ですが少し厚みがあり、レザーブレスレットのような力強さが感じられるストラップを、1から作りました。実際にシナトラと同じ腕周り16〜17cmの男性が身につけても、ブレスレット感覚で違和感なく機能するサイズとデザインになるよう心を砕きました。

 

さらに偶然も重なりました。2年ほど前から当店で販売し、大変ご好評いただいているエルメスライクな1940年代スウェーデン製のチェーンブレスレットとの相性が抜群で、特にチェーン幅が最も太いボールドモデルを装着すると腕時計とチェーンがまさに一体となり、重量感のあるブレスレットウォッチが完成します。

僕はこのジャンルの腕時計を、レディースウォッチとは呼びません。なぜなら、ただサイズが女性向けのそれであるということだけでレディースウォッチと限定してしまうのが非常にもったいない。それくらい、この男装の麗人を思わせるクールな腕時計は性差を問わないファッショナブルなアイテムだと思ったからです。今回のテーマ「マイクロウォッチ(小型腕時計)」のmicroという無機質な形容詞を選んだのも、そこにtinyやlittleのようなある種の「可愛らしい」イメージを排除したかったからです。

 

 

どちらかというとファッション寄りのテーマ。アクセサリー慣れしていない人には少しとっつきにくいかもしれませんが、腕時計以外アクセサリーをしない僕自身、ラフなスタイルにもドレスアップにも意外と汎用性があってハマってしまいました。

いわゆる「定番」とか「いつの時代も変わらない云々」のような耳障りのいい言葉は一切無視の新しいジャンル。アップルウォッチ、あるいはスマートフォンで代替される腕時計とはベクトルが全く異なるアイテム。4年の時を経て未だなお熱が冷めない。今だからこそ伝えたい。