様々な背景を持って現在に受け継がれ、ヴィンテージと呼ばれる年月を生きた腕時計の文字盤には、実に魅力的で多種多様な経年変化が見られます。それらは、言わば記憶。

ここにある2本の腕時計は、かたや重厚なエイジングを見せる文字盤に対し、もう一方は未使用状態。しかしながら両者に共通するのは、時分針の跡が日に焼けてその形を文字盤に留めた「時の記憶」です。

おそらくショーウィンドウで何十年も飾られていたのでしょう、左の〈レコード〉は針の跡が何ヶ所にもわたって残っているのは、何度か店主がふと時計が止まっているのに気づいてリューズを巻いて動かすというかつての日常を思い起こさせます。

右の〈レクタ〉は明らかに長針と短針が4時17分の位置で止まり、そのまま何十年も放置されていたと思われます。しかし文字盤そのものは日に焼けておらず、製造当時のシルバーダイヤルの輝きを見せています。おそらく日の当たる場所には置かれておらず、長期に渡って針の常光塗料によるラジウム焼けが原因でしょう。

いずれも1940年代に生まれ現在に至るまでの足跡を文字盤に宿した、我々の想像力をかきたててくれる腕時計です。