ケースサイズ28mmというと、40mmを超える現行品と比べると格段に小さい。ともすればむしろレディースサイズと思われかねない。でもそれは多分、戦後徐々に巨大化していった腕時計サイズと、昨今のマーケティングによって長年刷り込まれた、ある種の思い込みに過ぎない。
事実、1930年代のメンズウォッチは、直径30mm前後のサイズがある種のルールでした。しかもこの小振りなケースサイズは当時の文字盤デザインと密接不可分の存在で、むしろ「このサイズでないと成り立たない」重要な要素だったと言えます。
想像してみてください。もしこの腕時計が40ミリの巨大なものであったら。このきめ細かく複雑で、かつ美しい曼荼羅絵のような文字盤デザインも、だいぶ間延びして間抜けな表情になってしまうでしょう。
この腕時計に一度触れてみて欲しい。その異様なケースフォルムが生み出す重厚感、文字盤の力強さ。そして現代の巨大な腕時計では味わえない、知性的な美の凝縮を感じることができると思います。



