ロンドン、マンチェスターと肩を並べるイギリス屈指の大都市バーミンガム。その中心部で中小のジュエラーが軒を連ねる「ジュエラリー・クォーター」と呼ばれる一角があります。

以前僕も買い付けの際にここを訪れ、一軒一軒ジュエラーを訪ね歩いては、店主が引き出しに仕舞っている古い腕時計を沢山発掘してきました。欧米では、腕時計はこのような宝飾品店が取り扱うジャンルのアイテムでした。日本だと眼鏡店が時計を取り扱うことが多く、この感覚の違いは腕時計が実用性だけでなくラグジュアリーな装飾品としてより強い意識がヨーロッパ、特に英国では強かったことを示しています。

 

 

話が横道にそれましたが、そのバーミンガムの宝飾街にかつて存在した〈W.A.ペリー〉の腕時計がこちら。「スパルタン」といういかにも質実剛健なイメージを思わせる腕時計で、当時ロンジンが好んで用いていたステップベゼルと3点のオープナーインセットが特徴の通称「トレタケ」ケースを採用しています。

ステンレススチールの塊を、段々にフラットな円が積み重なる重厚なフォルムにくり抜かれたベゼルの力強さが、多くのヴィンテージウォッチファンを虜にしてきたことは言うまでもありません。無名のジュエラーが、このような高品質なサプライヤーの傑作ケースを採用することができたのも、この時代にだけ存在した奇跡といっても過言ではありません。

個人的にはライムグリーンに色付いた文字盤の経年変化も気に入っています。