昨年の買い付けで出会ったロレックス。1930年代、Ref.2280のオイスターロイヤル、イングランドダイヤル。さらにインドの都市チェンナイで1846年に創業し現在も続く老舗宝飾品〈P.ORR & SONS LTD〉のダブルサインモデル。

英国由来のデザイン、ジュエラーズウォッチ、フルオリジナル。これらの情報だけでもadvintageの志向するアイテムとして充分な条件を備えています。実際ドイツの時計市で入手したときは僕自身も興奮を覚えましたが、いざ戻ってこの腕時計と向き合ってみると急に冷めてしまいました。

advintageのセレクトする腕時計のコンセプトは「知られざる傑作」です。しかしこの腕時計は、「傑作」ではあれど「知られざる」と言うには有名すぎる。どこまでこの腕時計のストーリーを紡いでも、「ロレックスのオイスターロイヤルである」という一点に収束してしまうのが、僕の中でイマイチ腹落ちしない原因だったことに後になって気付きました。

advintageで有名なブランド・メーカーを滅多に扱わないのは、完全にそれらをスルーしているのではなく、むしろリスペクトした上でコンセプトを裏切らないアイテムであるかどうか慎重に吟味しているからなのですが、やはりバイイングの現場では気持ちが高揚してしまう。とはいえ、そのような出会った時の胸が高まる感情も大事なストーリー。

まさに冷静と情熱のあいだのバイイングという理想を確認できたという点で、販売の予定はないものの、ある意味先のドイツ買い付けで最大の収穫だったかもしれない、いろいろなことを教わったロレックスでした。