今月のテーマは、半世紀を優に超えて今に受け継がれ、それぞれ異なる背景を持った対の腕時計たち。入手した場所も、年代も、ブランドも様々な昔々の腕時計が、まるで生まれ育った場所も、国も、年齢も違う僕らのように運命的に出会い、惹かれ合う。そんな当たり前で奇跡的な光景をヴィンテージウォッチで表現する試みです。
あえてペアウォッチと呼ばないのは、それは多くの人が思い浮かべる恋人同士のペアリングのようなものではなく、友人、パートナー、兄弟姉妹、あるいは親子といったさまざまな関係性で紡がれる物語を想起します。「デュエット」という主題には、そういう思いも含まれています。
ちなみに今回の扉絵を飾るこちらのシーマ、クラムシェルのレクタンギュラーとトレタケ、ルミナスとノンルミナス。いずれも1930年代生まれの腕時計で、しれっと同じブランド、同じ「デラックス」のネームで当たり前のようにありますが、こんな古くてレアなモデルがペアウォッチみたいな対で出てくるなんてこと、必死こいて探してても数年に一度あるかないかの奇跡。