今月のコレクションテーマは「黒の陰影」。
ヴィンテージウォッチのジャンルの中でも異彩を放つ黒文字盤の腕時計。中でも今回は、下地となる文字盤にメッキをかけ、目盛りやインデックス、ロゴをマスキングし、その上にブラックの塗装をかけたのちマスキングを剥がすという製法をとった、ギルトダイヤル(Gilt Dial)にフォーカスします。
腕時計において黒文字盤は本来ドレスウォッチのダイヤルカラーのひとつでしたが、その歩留まりの良さや視認性の高さからミリタリーウォッチに多用されたため、軍用時計の代名詞というイメージが定着している印象。しかしギルトダイヤルの魅力は工芸品のように神秘的な美を感じさせる点にあり、またギルトと言ってもゴールドだけでなくシルバーやカッパーのような彩りのバリエーションが存在する点も見逃せません。
ブラックの塗料を何層にも塗り重ね、さらにそれを磨き上げることで漆黒に仕上げた文字盤と、自ら輝くようなインデックス。特にコンディションの良いものは、あたかも月の光を浮かべた夜の湖面を思わせる光と闇の美しいコントラストを楽しめます。