ラギッドケースの代表格として上がるのはやはりフランソワ・ボーゲルのオクタゴン。その最初期となる1930年代のモデルには、背面の裏蓋と同じくファサードにも10角のねじ込みベゼルを持つ幻のスリーピースケースが存在しました。
極めて異様。おそらくツーピースの方が気密性も高く部品数を減らせることで、スリーピースモデルは早々と廃盤になったと思われます。

 

 

対のヴァーテックス、新旧FBオクタゴナルケース。ともにブレゲ数字、ブレゲ針。「オールプルーフ」という、かなり威勢の良いモデル名も新鮮です。

FBのオクタゴナルケースは、多くのブランドに愛されたこともあってその文字盤デザインも多彩。こちらは黒の背景に金の抜き字で大胆に描かれる図像とは裏腹に、静謐さすら感じるセクターダイヤル。
アール・デコの粋を集めた幾何学的な調和の美が、腕時計という枠に見事に納められた逸品です。

 

 

もうひとつのオクタゴン。ヴィンテージウォッチ市場でしばしば注目されるスイスのジュエラー〈チューラー〉が手掛けた、1930年代の腕時計です。
1883年2月5日にスイスのビエンヌで産声をあげたヨーロッパ有数の老舗宝飾品店で、タイムリーなことについ先日140周年を迎えました。
この個体もまたアンユージュアル。幾何学的なアール・デコの美意識が見事なまでに凝縮されています。

 

 

直線と角で構成されるゴツゴツしたフォルム。無機質でハードな印象に見え隠れする上品なドレス要素。このシルエットの潔さがたまらんのです。
そしてこの10年探してきてようやく2本目となるマイクロモデルにも出会えました。しかもJ.W.ベンソン。震える…