遅くなってごめんなさい。
今月のテーマは、”ca. 1930″です。
勘の良い人はお気づきと思いますが、今月からadvintageの本拠地となる銀座・奥野ビルへのリスペクトを込めて、その竣工と同時代の腕時計をセレクトしました。
1932年とは腕時計市場においてどんな時代であったのかというと、懐中時計から腕時計へ大勢が移り変わる画期となった第一次世界大戦を経て、とりわけ宝飾品店を中心に腕時計の取り扱いが増え、市民権を得始めた時代でした。
懐中時計を腕時計サイズにリサイズするのではなく、きちんと腕時計ムーブメントとして独自の開発に成功したウォッチメーカーが台頭し、耐震装置や自動巻機構など、腕時計という独特の着用シーンに順応するべく各社が鎬を削り、さまざまな名品が生まれた時代でもありました。
デザインにおいては、1920年代に流星を極めたアール・デコが腕時計に花開き、デザイン性と実用性の両面で優れ、続く40年代に至るまで長いトレンドを誇ったユニークなデザイン群が見られます。
1932年に竣工。随所に日本独自のアール・デコが息づき、今も変わらぬ佇まいを見せる奥野ビル。そこで出会うに相応しい腕時計は、時計であると同時に今と昔をつなぎとめる特殊な装置でもあります。