今月のテーマ「異形の腕時計」。様々なバリエーションからピックアップした前半に対して、後半はステップドベゼルにフォーカスします。
ステップドベゼルと言えば、フラットなベゼルが階段状に配された重厚なシルエットが最大の魅力で、ヴィンテージウォッチ界でも屈指の高い人気を誇ります。嫌いな人ってむしろいないんじゃないか。それくらい、メジャーな存在です。アンチ・メジャーが信条、根っからのマイノリティであるadvintageですが、ステップドベゼルに関しては中毒者のひとり。
そしてこのケースデザインは、なぜか1940年代までで姿を消します。それ以降、現行品に至るまで、ほぼ皆無です。おそらくミッドセンチュリーに始まる流線型でふくらみのあるプロダクトデザインの隆盛に伴い、一般的な人気が薄れてしまったことが原因と思われますが、その全盛期ですら製造数は非常に少ない。力強いケースデザインの一方で、非常に儚い存在というところも、見る者を惹きつけるのかもしれません。
今回のラインナップは有名なロンジンのステップドベゼルをはじめ、あまり知られていない、もしくは無名のアノニマスブランドでありながら、名門と遜色のない輝きを放つ個体までさまざま。シンプルながら、ディテールの微妙な違いが異なる世界観を持つ逸品揃いです。是非。