今月フォーカスするのは、「ラージケース」。一般的にadvintageがセレクトする1940年代から50年代腕時計は、30mm前後のケースサイズが8割以上を占めます。あるいは28mm程のやや小振りなサイズも、ミドーやブラヴィントンズといったデザイン性の高い腕時計には多く見られます。もちろん全て紳士用。

こうした感性は、当時の腕時計はアクセサリーの形状をとった極小の精密機械というイメージが強かったことが由来しているかもしれません。大きなものでは懐中時計も依然使用率が高かった時代ですから、むしろ腕時計は小さいもの、という認識はごく自然と言えます。

もちろん当時のファッショントレンドの影響は強かったと思われますが、このように黎明期の腕時計はより上品に、腕元を飾るアイテムとして30mmのサイズが主流でした。現代機によくある、腕を覆ってしまうような「デカ厚」と呼ばれる腕時計の発想は、懐中時計が不便だからと腕にベルトを巻き付けて使わんからったという、トレンチウォッチ以外にあり得なかったと思います。

そんな中、まれに35mmを超えるケースサイズの腕時計が当時も存在していました。数はとにかく少なくて、全体だと2割無いくらいの体感です。おそらくメーカーもトレンドを狙ったものではなく、ある種の変化球的な企画として少量生産したものと思われます。

腕時計のサイズのトレンドは時代を経るごとに大きくなっていて、1970年代後半になると、すでに35mm前後が定番サイズになっていますが、今回フォーカスするのは主に1940年代から50年代。レア度も高く、それでいて迫力のあるルックスは半袖で心許なくなる腕元を飾る夏の腕時計にも、是非選択肢に入れて欲しいジャンルです。

もちろん、ただデカいのを選べばいいって訳じゃない。それだと単に品のない腕時計を選びかねません。
クラシックなフェイスなのにデカい、というのがミソ。この絶妙なアンバランス、心地良い違和感がラージケースのヴィンテージウォッチを選ぶ醍醐味です。