防水ウォッチケースといえば、ロレックスのオイスターケースが思い浮かぶ方も多いと思いますが、それ以前、19世紀末から様々な防水構造を持つケースを発明・製造していたのが、〈フランソワ・ボーゲル〉です。
1920年代からタウベルト社(Taubert & Fils)に吸収された、一般的にはそれほど知名度の高くないサプライヤーの一つですが、モバードやミドーなど様々な腕時計がこぞってそのケースを採用し、雲上ブランドのパテック・フィリップすらそのファミリーに入るという信頼の高品質を誇る、知る人ぞ知る名門。そのケースデザインも多彩で、「こんなものも?」というレベルで豊富なバリエーションを見ることができます。

 

ウォッチケースメーカーに焦点を当てている今月の渋谷店では、このボーゲルケースのバリエーションが多く揃っています。画像はその一部ですが、こうしてずらりと眺めてみると新鮮。

 

 

 

 

 

ボーゲルケースの代表格が、モバードとウエストエンド・ウォッチカンパニー、そしてミドー。モバードで特に有名なのが、右のようなユニークかつ力強いラグデザインが特徴の、「アクヴァティック」と称されるスポーツモデル。左のウエストエンドはミドーが製造を手がけた「マルチフォート」で、バンパー式自動巻ムーブメントを搭載した珍しいモデルです。

 

 

 

 

 

モバードのカレンダーウォッチと、ブラヴィントンズ。いずれも通常よりやや大振りなラージサイズのボーゲルケース。小振りなサイズが目立つ中で移植の存在感。

 

 

 

 

 

こちらは〈ミドー〉の英国陸軍"ATP"モデル。民生用ながら高い防水性と視認性、耐衝撃性を備えるミドーの腕時計が、その性能を買われ軍用時計として英国陸軍にそのまま応急的に納入された珍しい個体です。ボーゲルケースの高い信頼性は、英国軍にも波及していました。
裏蓋にお決まりのATP(Army Trade Pattern)とブロードアロー、そしてブローカーとなった英国の宝石商〈ブラヴィントンズ〉のネームが刻印されていますが、本来商品として販売する個体だったため、英国軍への納品前に手彫りで後から彫られているのが特徴。

 

 

 

 

 

 

この10角形の裏蓋にピンときたら、ボーゲルケース。是非渋谷店でその魅力に触れてみてください。