対のロンジン・文と武
 

アンティーク 腕時計

シンプルな三針時計にも、それぞれ唯一無二の背景やそれに伴う独自のデザイン性といった複雑な要素が凝縮されています。
右はウエスト・エンド・ウォッチカンパニーが1940年代にロンジンに製造を委託した、インド高等文官(Indian Civil Service)用の腕時計。

左はドイツ陸軍にロンジンが納品した、陸軍士官用の腕時計。同じく1940年代。

 

ウエスト・エンド社は、大英帝国によるインド統治下の文官・武官向けのミリタリーウォッチを供給していたことで知られるスイスの時計メーカー。とりわけロンジンとの関係も深く、両社が互いにムーブメントやケースを供給し合う間柄でもあり、こちらの個体は文字盤上にウエスト・エンドとロンジン(赤字)の両社名が連なるダブルネームモデル。ロンジンがムーブメントを供給、ケースはウエスト・エンド社製になります。

 

アンティーク 腕時計

後に現地のインド人にも門戸が開かれたものの、伝統的にイギリス人貴族の子弟がほぼ独占していたインド高等文官というポスト。実際に着用していた人々の出自を表すかのように、そのデザインは他のモデルとは一線を画す、煌びやかで高貴な印象です。

(☞商品ページ)
翻ってドイツ陸軍モデル。

 

アンティーク 腕時計

グロテスクなほどに重厚感を感じさせるステップドベゼルケース。ブラックダイヤルに夜光塗料をふんだんに用いたインデックスデザイン、レイルウェイトラックといった典型的なミリタリーデザインを採用。ブラックミラーフィニッシュのダイヤルは、強烈な日差しと苛烈な使用環境を経て枯れた風合いに変化し、見事なまでに味わい深い表情を生んでいます。

(☞商品ページ)
裏蓋にも、それぞれの採用先を物語る刻印が見られます。

 

アンティーク 腕時計

C.S. (I) とは、”Civil Service in India”つまり先述のインド高等文官を示し、DHは”Dienstuhr Heer”というドイツ語の頭文字で、ドイツ陸軍制式時計を意味しています。
文官、武官の使用環境を如実に物語る2本の腕時計。
たとえブランドの安心感にあえて目隠しをしたとしても、この2本の魅力は褪せません。