リップの良さとは何か。
その良さが凝縮されているのがこのレクタングルモデルだと思います。
 

アンティーク 腕時計

以下に長々とその理由を語りますが、それはやはりパッと見て良いと分かる上品なルックスに加え、歴史に裏付けられた確かな時計技術。そして何より、稀少。ある意味、コレに尽きる部分もあります。これだけ探しても納得できるコンディションのものは3本しか出てきませんでした。
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リップというブランドは、知名度はそこそこあるのに何となく「そこそこ」感を脱しきれないイメージ。そしてしばしば、英国ブランドの《スミス》と比較されます。おそらく歴史的にもラインナップの性格的にも、非常に良く似ているからかもしれません。
☞リップの歴史について
「純国産」「シンプルな三針時計主体のラインナップ」「オリジナリティのある文字盤デザイン」
これらのキーワードとともに、両者とも19世紀半ばに生まれた比較的古参のメーカーという点も同じ。逆に両者の大きな違いはと言うと、スミスは1950年代~60年代に腕時計生産数のピークを迎えた後70年代にはメーカー自体が消滅しているのに対し、リップは現在もそのブランドが継続しているという点。
リップは比較的早い時期、つまり1947年頃からすでに電池式の腕時計「エレクトロニック」の開発に着手しており、その後は《エルジン》との技術協業の元、新技術を用いたムーブメントの開発を続けました。ゼンマイ式のクラシックなムーブメントに執着した結果クォーツショックに散ったスミスとは反対に、技術革新への指向性でそれを乗り切ったリップ。
その違いが腕時計のデザインに表れるのは、至極当然かもしれません。クラシックな路線に伴い高級素材のケースやシックな文字盤デザインが豊富に揃うスミスの腕時計に比べ、リップの場合はモダンなデザインのものが多く、特に60年代以降の小文字ロゴ以後大衆路線へと移った結果、ややもするとチープなデザインやケース素材のものが目立ちます。それが「そこそこ」感の原因となっているのかもしれません。
もちろん、60年代以降のリップの腕時計にも名作は存在します。しかしadvintageがお勧めするのは、1950年代以前の大文字ロゴの腕時計、とりわけ、キャリバー”T18”を搭載したレクタングルモデルです。このモデルこそ、リップが誇るオリジナリティの最たるものだと、声を大にして言いたいのです。また製造期間が1940年代で終了してしまったため、残存する個体もスミスの「デラックス」等と比べて圧倒的に少ないことも、その価値を高めています。
T18モデルは1933年から1949年まで製造されていますが、最も初期の個体がこちら。ベルトラグが固定式となっています。
 
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こうした固定式ラグ(パリス管)用のベルトはバリエーションに乏しく着け換えを楽しむのはちょっと大変ですが、ミリタリーテイストを感じさせるこの武骨な雰囲気もまた一興。
他の2本はバネ棒式となっていますので、ベルトの着脱は比較的簡単です。両者ともシックで上品な表情のため、ベルトのセンスが一層際立ちます。
 
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このモデルは1949年で生産が終了し、その後はリップはこうしたクラシックなスタイルの腕時計から徐々に遠ざかることになります。その儚さも、このT18の魅力が際立つ理由なのかもしれません。
実際なかなか良いものが出てこないジャンルですが、今後も根気強く探してみたいと思います。