英国軍のミリタリーウォッチ。
いずれも異なるメーカーによるものですが、ほぼ共通のデザインが用いられています。
こちらの腕時計はいずれも1940年代のもので、裏蓋に”W.W.W.（Waterproof Wrist Watch）”の刻印が見られる英国軍所有のものです。そのデザインは同空軍の要請のもと開発されたIWC製のマークXがベースになっており、俗に「ダーティ・ダース（Dirty Dozen）」と呼ばれる12のスイス時計メーカーが製造・納入にあたっていました。
ちなみにその12のメーカーとは、Buren、Cyma、Eterna、Grana、Jaeger Le-Coultre、Lemania、Longines、IWC、Omega、Record、Timor、Vertexの12社ですが、Enicarが13番目のメーカーとして存在していたとも言われています。
1940年代末頃にはスモールセコンドからセンターセコンドにモデルチェンジし、主にセンターセコンドとなりますが、ベースとなるブラックダイヤルにレイルウェイインデックス、アラビア全数字、夜光塗料が盛られたドットインデックスとペンシルハンドといった実用性の追求から生まれた意匠は、いわばユニフォーム的な共通性があります。やや大振りな36mmの肉厚ケースも、力強さを強調した武骨な印象です。
特徴的なマットクロームプレートケースの状態も良好で、夜光の風合いも抜群。また《エテルナ》はオールステンレススチール製のケースが採用される数少ないメーカーのひとつです。ある程度語り尽くされている人気の高いジャンルでもあり、ただでさえミリタリーフェイスのクール＆タフなルックスなので、シャツ一枚に合わせるだけでなんとなく完成してしまう、そんな腕時計かもしれません。
腕時計自体にパワーがあるため引き算的なコーディネートのほうが取り入れやすいアイテムですが、あえてパンチのあるミリタリートップスと合わせて、きわどいバランス感覚を楽しみたいところ。
ちょっと野暮ったいかもしれない。でもさらっと着けるのはありきたり過ぎてつまらない。逆に、これくらい味があって存在感もあるトップスに似合う腕時計は、ブリティッシュアーミーくらいかなとも思います。ちなみにこちらのショートジャケットは英国空軍（ロイヤルエアフォース）のアヴィエータージャケット。ミュージアムピースとも言われる名品で、グレーカラーはほとんど見られない超希少なモデル。
このジャケットもいわば「ユニフォーム」です。ただ、「ユニフォーム」＝「日常着」ではない。本来日常から乖離した環境に適応するべく作られたアイテムをファッションに落としこむには、ある程度独自の解釈が必要なはず。プロダクトとしての美しさやユニークネスをいかにして自分のものにするかという、ある種の挑戦にミリタリーアイテムの楽しみがあるのかもしれません。
明日の渋谷店も15:00より開店しております。都合が合えば是非。