昨今、《ノームコア(Normcore)》という単語がファッション業界の新たなトレンドとして取り上げられています。
ノームコアとは"Normal(普通)"と"Hardcore(ハードコア)"を融合させた造語で、「究極の普通」として、パーカやデニムといったあえてダサい格好をするスタイルとしてファッション界で言われています。ただ本来はファッションではなく、思想を表す概念として登場したそうです。自分の服が他人に嫌な印象を与えないこと、トレンドよりも好感度を重んじる、適応性の高い服を選ぶといったといった傾向がありますが、少し曖昧な概念です。
ファッションの分野では、2014AWはベーシック&スタンダードがキーワードでした。普通のものをお洒落に着こなす、というのがその中心にありましたが、同時にファッショニスタと呼ばれる人たちの誰もが個性的で、それが逆に没個性的に見える、という装飾過多に対するアンチテーゼであったようにも感じます。
 


 

ノームコアの文脈で挙げられることの多い2人。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグは、同じ服を何着も持っていていつもそれを着ていることで知られています。
ちなみに現在進行形のノームコアの体現者と言われるのが、《Tumblr》創始者のデイヴィッド・カープ。ジョブズやザッカーバーグのように、普通に着てしまうとややもするとダサくなってしまうアイテムを、彼は品良くお洒落に着ています。チェックシャツにパーカとデニムが彼の定番ですが、素材感とシルエットがポイント。
 

ノームコアに対する考え方は多岐にわたり、人それぞれいろんな意見があるようですが、個人的には「いつも同じものばかり着ている」という感覚です。「でも、その服が着る人の雰囲気にベストマッチしていてかっこいい」というのがファッションにおけるノームコアだと一応考えています。ただ、その方向性は自分の独自性やトレンドのアピールではなく、あくまで控えめ。
「トレンドを降りて、自分のライフスタイルにマッチした服を着る」というと分かりやすいでしょうか。自分を客観視して、自分に合うものを選ぶという、服に限らず買い物全般に言えるセレクトの基準を示しているようにも思えます。逆説的ですが、こっちのほうがよりお洒落で個性的に映ります。
パーカやデニム、ジャケットといったごく普通のアイテムに、いかにも高そうな腕時計は似合わない。でも、チープな腕時計や現行デザインの腕時計ではただのダサいカッコで終わってしまう。ノームコア・スタイルの危うい境界線を上手にバランスをとってくれるアイテムは、やっぱりアンティークの腕時計。というのはちょっと強引か…(笑)
ただ、アンティークの独特のデザインやルックスには、古いと同時に新鮮な美しさがあって、決して主張しすぎることがありません。この絶妙な個性は、実はファッションとしてのノームコアを体現しているのではないかとも思ってしまいます。「ノームコアは、大部分においてはある種のノスタルジアだ」という専門家もいます。きっとそこに理由があるのではないでしょうか。
 

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